okage-sama日記

聴覚障害のある和尚のブログ

残存聴力活用型人工内耳システム 手術体験

 秋田大学医学部付属病院にて、メドエルEAS人工内耳システムの埋め込み手術を受けました。

 当初の予定は、2019年1月9日入院、11日手術、18日までに退院というものでした。実際は、傷の回復状態がよいとのことで、16日に退院しました。

9日・10日(入院から手術前日まで)

 9日の10時半に受付し、入院生活がスタートしました。術前に聴力検査をするものと思っていましたが、耳の検査はありませんでした。起床・食事・就寝時の計五回、検温と血圧測定がありました。また、私は血糖値が高いため、同じく五回の血糖値の検査がありました。

 手術前はもっぱら〈説明と同意〉のための時間です。手術、麻酔、血液製剤の使用、遺伝子検査について説明を受け、同意しました。手術・麻酔・血液製剤については、いずれもリスクが伴いますが、手術をお願いする以上は「同意しない」という選択肢は無いでしょう。同意を前提に、疑問があれば質問して不安を解消する時間という感じです。適宜図や筆談を交えて丁寧に説明をいただきました。

 両耳の後ろ側を、付け根に沿って切開し、インプラントと電極を入れます。イメージ的には耳の長さ分を切るような感じです。

11日(手術日)

 10日の21時から絶食。11日の6時45分までにコップ一杯程度の水(かお茶)を飲み、以後は絶飲。絶食・絶飲になると、妙にお腹がすいて喉が渇くものです。お菓子が食べたくなったり、コーヒーが飲みたくなったりして、困りました。

 術衣に着替え、8時40分ころに、車椅子に乗って手術室へ向かいました。今まで大きな病気をしたことも無く、手術をするのも初めてです。車椅子に乗ったあたりから急激に緊張感が高まり、テレビで見るような手術室に入ったあたりで不安を感じ非常に心細くなりました。

 ベッドに寝て、心電図のシールを貼ったり、指先に酸素を測る機械をつけたりして、いよいよ麻酔の点滴が始まりました。酸素マスクをつけたなぁ・・・・・・から意識が無く、目が覚めたら病室のベッドの上でした。目を覚ましたのが確か18時ころ。猛烈な吐き気がして、吐き気を抑える薬を点滴に入れてもらいました。

 吐き気が強烈すぎて、しばらくは痛みを感じる余裕も無し。20時くらいから傷が痛みだして痛み止めをもらいました。医師・看護師は「めまい」の有無を気にしていましたが、私の場合はめまいはありませんでした。深夜になったころ、ひどい耳鳴りがして思わずナースコールをしてしまったのですが、今思うと、実際に耳鳴りがしたか定かではありません。耳鳴りがしているような気になったというか、そういう夢を見ていただけのような気もします。いずれにしろ、麻酔から覚めた後は、吐き気→痛み→耳鳴りで全然眠れませんでした。

12日~14日(術後三日)

 12日~14日は、終日抗生剤の点滴がつながっていて、動くのに多少不自由します。また、手術の影響で耳に水がたまるため、耳の奥がゴロゴロして少し気になります。この水のせいか耳はまったくと言っていいほど聞こえません。

 一日五回の検温・血圧・血糖検査、一日一回の診察以外は特にやることもなく、テレビを見たり本を読んだりして過ごしていました。めまいや耳鳴りはまったく無く、傷も思ったほど痛くはありません。私は、鈍痛で読書に集中できないのが嫌で、この三日間は痛み止めを飲んでいましたが、飲まなくても過ごせるレベルの痛みです。

 傷口のガーゼ交換が無いのには驚きました。子どもの頃(40年も前ですが)、頭や指を切って縫ったときは、血でくっついたガーゼを交換するのが嫌でたまりませんでした。今や、そんなことは必要ないのですね。また、傷口がふさがる早さにも驚きました。この三日で傷をガードする覆い状のものも不要になりました。

 困ったのは、寝るときに寝返りが打てないことでした。両耳を手術したため、左右どちらを向いても耳が下になり、こすれて痛みを感じます。日中は眠らず、痛み止めも飲んで、夜に眠れるように努めましたが、耳がこすれるとどうしても目が覚めてしまい、慢性的な寝不足になりました。

15日・16日

 抗生剤の点滴が終わりました。傷がふさがり、痛みもおさまり、ある程度寝返りを打っても平気になりました。傷が順調に回復しているため、16日以降に退院できることになりました。

 傷が回復する一方で、相変わらず耳はほとんど聞こえず、そのことが不安になってきました。医師からは何度も、「術後しばらくは耳に水がたまって聞こえにくい状態が続く」との説明を受けていましたが、「聞こえにくい」と言うより「聞こえない」に等しく、「しばらく」すれば術前に近いくらい聞こえるようになるのか、非常に不安を感じながら16日に退院しました。

2月14日現在

 退院してほぼ一ヶ月。明日、最初の音入れがあります。

 この一ヶ月、「『残存聴力活用型』なんだよな・・・・・・」、「『しばらく』は聞こえにくい(しばらくすれば聞こえるようになる)んだよな・・・・・・」と感じながら、不安な日々を過ごしてきました。

 確かに、退院時よりは少し聞こえるようになっています。しかし、実感としては「聞こえない」に極めて近い状態です。術前は聞こえた音、例えば車のクラクション、部屋の戸をノックする音、スマホの呼び出し音や目覚ましの音などが聞こえません。言葉の聞き取りはできなくても、声自体は聞こえたはずが、今は話しかけられてもまったく気づかないという状態です。術前の聞こえを「10」とすれば、今は「1」くらいでしょうか。この状態が固定化してしまうのか、それとも少しずつ術前の状態に近づいていくのか、明日うかがってみようと思います。